生かせなかった“圧倒的なスピード” 第8、9戦 セントルイス インディ500で2勝目を挙げてから1週間。2019年に優勝したセントルイスで、佐藤琢磨はまたも栄冠を勝ち取ってもおかしくなかった。最初のレースを落としたのは、純粋にピットストップが長引いたため。第2レースでも琢磨は余裕でトップを快走していたが、レース戦略が裏目に出て勝利を逃していた。 ミズーリ州のトリッキーなレイアウトを持つ1.25マイル・オーバルにやってきたとき、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング・チ
生涯2度目の“ミルクシャワー” 第7戦 インディ500 どんなレーシングドライバーにとってもインディ500での優勝は人生のハイライトに値することだが、アメリカ最大のレースで2度目の勝利を勝ち取った佐藤琢磨にとっては本当に大きな意味を持っていた。なぜなら、彼をサポートする周囲の人々にとっても、琢磨と変わらないくらい大きな価値があったからだ。 今年のレースでは、残り5周の時点でレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのチームメイトであるスペンサー・ピゴットが激しくクラッシ
琢磨を追い込む小さな禍第5、6戦 アイオワアイオワ・スピードウェイで行なわれたインディカー・シリーズのダブルヘッダーにおいて、佐藤琢磨はその最初のレースの前半戦を実に力強く走りきった。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダに乗る琢磨は、レースの折り返し点を3周過ぎた時点まで49周にわたってトップを走行したのだが、その後、事態は急変する。「とてもタフでフラストレーションがたまる週末でした」 金曜日の夜は10位、土曜日は21位でフィニッシュした琢磨はそう語
矢継ぎ早の2連戦 第3、4戦 ロードアメリカ 最初は決して期待の持てる展開ではなかったが、ロードアメリカで開催されたインディカー・シリーズの2連戦を佐藤琢磨はいずれもトップ10で終えた。どちらのレースもオープニングラップで遅れたものの、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダを駆る琢磨は安定したペースでレースを走りきり、土曜日は9位、日曜日は8位でチェッカードフラッグを受けたのである。 インディGPから直接ロードアメリカにやってきたチームは、冬の間に開
ようやく迎えたシーズンの幕開け第2戦 インディGPインディカー・シリーズの開幕が3ヵ月遅れとなるのがたとえ平気だったとしても、佐藤琢磨がレースを戦うまでにはそこからさらに4週間待たなければならなかった。しかも、さらに腹立たしいことに、琢磨が本当の意味で勝負に挑めるようになったのはレース中盤を迎えてからのこと。インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースで開催されたインディGPの途中でようやく態勢が整った琢磨は驚異的な追い上げを見せ、最終的に10位でフィニッシュし
第17戦 ラグナセカ 実らなかった努力 夏以降、佐藤琢磨には数多くの不運が降りかかったが、それでも今シーズンを通じて琢磨はインディカー・シリーズを力強く戦った。ところが、獲得ポイントが2倍になる最終戦ラグナセカのレース半ば、琢磨は他のドライバーに接触されてマシーンにダメージを負ってしまう。それでもこの時点では、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)のダラーラ・ホンダは6番手につけていたので、決勝を10位かそれ以上の成績で終える可能性は十分
第16戦 ポートランド スタート直後の躓き 昨年、久しぶりに開催されたインディカー・シリーズのポートランド戦。佐藤琢磨は、オレゴン州のトリッキーなロードコースにおけるペースが際立って速かったわけではないものの、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)の目の覚めるような戦略を駆使してその栄冠を掴み取った。今年、琢磨とグレアム・レイホールのコンビは去年よりずっとコンペティティブだったが、1周目に起きた不運なアクシデントにより2台のダラーラ・ホンダは戦線離脱。この
奇跡の勝利! 第15戦 セントルイス 優勝! 6月初旬以来、佐藤琢磨を苦しめ続けてきたシーズン半ばの不運がこんな形で幕を閉じると誰に予想できただろうか? ゲートウェイのショートオーバルで行なわれたインディカー・シリーズの第15戦において、琢磨は鮮やかな復活を遂げた。このようなコースではよくあることだが、琢磨は一時期ラップダウンとなりながら、戦略の妙でそこから立ち直ってみせた。とはいえ、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)のダラーラ・ホン
第14戦 ポコノ 的外れな非難 ポコノで行なわれたインディカー・シリーズの500マイル・レースは、佐藤琢磨を含む5台のマシーンがオープニングラップのアクシデントに巻き込まれ、琢磨はわずか1マイルほど走っただけでリタイアに追い込まれた。不幸中の幸いだったのは誰も大きなケガをしなかったことだが、6月に始まった琢磨の不運は8月のポコノでも繰り返されたのである。 とはいえ、琢磨は全長2.5マイル(約4km)のポコノ・スーパースピードウェイを心から愛している「初めて参戦したときから
第13戦 ミドオハイオ 小石が招いた災い インディカー・シリーズにおける佐藤琢磨の復調がなかなか見通せない。ミドオハイオ戦ではまたも“シーズン半ばのジンクス”に見舞われ、琢磨に非がなかったにもかかわらずオープニングラップでアクシデントに巻き込まれてしまう。それ以降、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)のダラーラ・ホンダはトップグループに匹敵するスピードを示しながらも、首位のほぼ1周遅れを走り続けた。このため、期待外れな結果に終わったプラ
第12戦 アイオワ 真夜中の悲劇 インディカー・シリーズのアイオワ戦を迎えても佐藤琢磨の不運は続いていた。シーズン半ばの悪いジンクスがそのまま残っているかのように、琢磨が上位フィニッシュする好機は周回遅れのドライバーによって奪われた。そして、このときの接触でマシーンにダメージを負ったため、琢磨は最終的にレースをリタイアしなければならなくなる。「いま必要なのは幸運ではありません。不運をなくすことです」と琢磨。「(6月上旬の)デトロイト以来、僕は毎回のようにトップ5を走行していな
第11戦 トロント 晴天の霹靂 あと17周走り続けていたなら、佐藤琢磨はインディカー・シリーズのトロント戦で5位入賞を果たしていただろう。いや、4位だったとしても不思議ではない。けれども、琢磨が操るNo.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダはピットに辿り着いたところで炎に包まれ、そこで琢磨のレースも幕を閉じた。カナダでの好成績は幻と消えたのだ。 「ものすごく残念です」と琢磨。「メカニックたちが素晴らしい仕事をしてくれたのに、ひどい不運に
小さな不運でトップ6フィニッシュを逃す 第10戦 ロードアメリカ ジェイムズ・ヒンチクリフが縁石に弾き飛ばされて佐藤琢磨に接触したとき、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダはインディカー・シリーズのロードアメリカ戦で6位入賞のチャンスを失った。これで琢磨は一時順位を落としたが、それでも挽回して10位でレースを終える。ただし、チャンピオン争いではひとつポジションを落として6番手となった。 結果は芳しいものではないが、フリープラクテ
一瞬のミスで栄冠を棒に振る 第10戦 テキサス 「本当に残念です」 佐藤琢磨が悔しそうに呟く。「大きな成功を収められそうな週末だったのに、望みどおりにはなりませんでした」 テキサス・モーター・スピードウェイで開催されたインディカー・シリーズの一戦を、琢磨はそんな風に振り返った。好調のうちに2019年のシーズン前半を終えた琢磨はテキサスでポールポジションを獲得すると、その決勝では最初のピットストップを行なった61周目までレースをリードしていた。ところが、その直後に不運なアクシデ
気まぐれな勝利の女神 第7、8戦 デトロイト インディカー・シリーズ恒例の2連戦“デュアル・イン・デトロイト”は佐藤琢磨にとって今年も悲喜交々の週末となった。今回も運と天候が様々に変化して信じられないような展開を生み出し、ほとんど全ドライバーが琢磨と同じような運命を辿ったのである。その結果、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング・ダラーラ・ホンダに乗る琢磨は第1レースを3位でフィニッシュし、今季3度目の表彰台に上ったいっぽうで、同じベル・アイランドの市
地獄から天国へ 第6戦 インディ500 インディ500では何が起きるかわからない。佐藤琢磨は2019年のレースでそのことを証明したといっていい。なにしろ、最終的に3位でフィニッシュしたものの、右リア・ホイールのトラブルにより一時はほぼ2ラップ・ダウンの31番手まで後退していたのだ。No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダは、今回、メインスポンサーのMi-Jackに敬意を表し、1回限りのレトロなカラーリングが施されていたが、レースが残り1