2019年 マーカス・シモンズレースレポート:インディカーシリーズ第4戦

苦しい戦いを8位で乗りきる
第4戦 ロングビーチ

 1週間前にバーバー・モータースポーツ・パークで見事な優勝を勝ち取った佐藤琢磨は、ロングビーチの市街地コースで8位入賞を危なげなく果たした。これといった事件が起きなかったこのレースで、No.30のレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング・ダラーラ・ホンダを駆る琢磨は8番グリッドからスタート。最初のピットストップ・シーケンスでは素晴らしい燃費マネージメントとレース戦略のおかげで一時トップに立つシーンも見られた。

 金曜日には通常どおり2回のフリープラクティスが行なわれ、琢磨は1回目を14番手、2回目を17番手で終えた。そして土曜日の午前中に行なわれたセッションは16番手という結果。「僕たちはバーバーで用いたコンセプトのセットアップで走行しました」と琢磨。「通常、この手法はうまくいきません。なぜなら、ロードコースと市街地コースではセットアップやタイアの構造が異なるからです。ただし、僕たちはロードコースのバーバーで大きな成功を収めたほか、シーズンオフのセブリング・テストでも市街地コース用のセットアップで走行し、強い手応えを感じていたので、トライしてみることにしました」

「どんな結果が得られるかを試してみましたが、バランスを正しく整えるのは困難でした。チームメイトのグレアムと僕でプログラムを分担し、解決策を見つけ出そうとしましたが、僕はバランス取りに苦しんだため、よりコンベンショナルな市街地コース用セットアップに改めることにしました。したがってプラクティスでセットアップを煮詰めるというよりは、あれこれ試してドタバタしていたというべき状況です。これはちょっと辛かったですね」

 ところが、予選では状況が一転。琢磨は第1セグメントでトップタイムをマークすると、易々と第2セグメントに進出したのである。「最終的に僕たちはちょっとした速さを見つけ出し、とりわけブラック・タイアでは好調でした。僕はとてもコンペティティブなラップタイムをマーク。これにはほっとひと安心で、ドライビングが楽しく思えました。タイアを使い切ると、自分が限界で走っていることが実感できます。続いてオルタネートのレッド・タイアを装着しましたが、アウトラップを終えて1コーナーに進入したところで赤旗が提示され、セッションはそのまま終了となりました」

 セッションが早めに終わったことで琢磨はQ1をトップで通過したが、同じ理由から、琢磨と同じ予選グループからQ2に挑んだドライバーは誰もが苦戦を強いられた。「僕たちにはQ3でフレッシュなレッド・タイアを使えるチャンスがありましたが、レッド・タイアがどんな反応を示すかわからないままQ2に挑まなければいけませんでした。つまり、どこまで攻められるのかがわからなかったのです。この点では僕もライアン・ハンター-レイも同じ立場でした。ブラック・タイアで走行したときは好タイムをマークし、クルマの調子も良好でした。そこでレッド・タイアに履き替えて臨んだ最初の計測ラップではまずまずのタイムを記録できましたが、ロングビーチはとてもミスを犯しやすいコースなので、本当の意味でのマキシマム・アタックではありません。このため、レッド・タイアを履いた計測2周目が週末のベストタイムとなるのが一般的ですが、ここで不運にも再び赤旗が提示されてしまいます。僕はまだタイアのウォームアップさえ済んでいなかったので、これは本当に残念でした」

 ここで琢磨は8番手となり、同じポジションからレースに挑むことが決まった。「最初の2列目までに並べられるクルマのパフォーマンスだとは思っていませんでしたが、3列目だったら不可能ではないと思っていました。だから、8番手は満足のいく成績ではないものの、プラクティスでの苦戦を考えれば堅調な結果だったといえます」

 ウォームアップ前にマシーンを変更したところ、琢磨は5番手タイムを叩き出すことになる。「これはいいことですが、ウォームアップは午前9時に始まるため、(気温が低くて空気密度が高いので)ダウンフォースが大きく、路面温度も低かったのでグリップ・レベルは高い状態でした。時間は十分とはいえませんでした。僕たちは大幅にセッティングを変更していたので、それを煮詰めるところまでは届かなかったのです。それでもレースについては前向きに捉えていました」

 スタートはやや見苦しいもので、上位3列目までだけがきちんと整列している状態だった。ここで琢磨は前のドライバーを追走するとともに、最初の数コーナーはパト・オーワードの執拗な攻撃に対処しなければいけなかった。「オワードは本当にアグレッシブなドライバーです! 彼はレッド・タイアを履いていたけれど、(前方4列目までのドライバーは)みんなブラック・タイアを装着していました。僕はちょうど前のドライバーに追いつこうとしていたので、自分のポジションを守ろうとしました。ターン1はサイド・バイ・サイド、ターン2もサイド・バイ・サイドで、ファウンテンに入ってもサイド・バイ・サイドのままでした! でも、なんとか守りきることができたのでよかったと思います」

 その直後、ファウンテン・ターンでマーカス・エリクソン、ジャック・ハーヴェイ、スペンサー・ピゴットらが関係するアクシデントが発生したためにイエローが提示。この後、琢磨は第1スティントを通じてサイモン・パジェノーを追走することになる。ここで琢磨は上位陣のなかで1回目のピットストップを最後まで引き伸ばすと、29周目には一時首位に浮上。第2スティントに入ると、間もなくウィル・パワーがターン1でオーバーシュートしたため、琢磨は7番手に駒を進めた。ところが、レースが残り30周ほど残した時点で行なわれた2回目のピットストップで琢磨はパワーの先行を許し、再び8番手へと後退した。

「僕はサイモンと戦っていました。ブラック・タイアでスタートした彼はレッド・タイアに交換してからも、僕らの予想に反して好調なペースを維持していました。僕はずっとサイモンの直後につけていました。嬉しいことに、ピットに入るタイミングは僕が最後でした。つまり、それだけ僕は燃料をセーブできたのです」

「おかげで、2回目のピットストップも最後まで引き伸ばすことができる状況でした。ただし、イエローが提示される可能性があるので、これはリスキーな考え方です。そこでチームは次のような戦略を立てます。もしもサイモンが走り続けたら、僕たちは早めにピットストップを行なってアンダーカットを狙う。僕たちはピットインすることを決めます。しかも、レッド・タイアのグリップレベルは高い。ところが、僕はレッド・タイアのバランスに手間取り、クルマの向きを変えられずに苦しみました。レッド・タイアのポテンシャルは高いのですが、僕にはそれが使い切れなかったのです。ブラック・タイアのほうがバランスはよく、このため1スティントの所要時間で考えればこちらのほうが速かったはずですが、アウトラップのパフォーマンスは圧倒的に低い。もしもF1であればタイアウォーマーを使えますが、インディカー・シリーズでは使用が禁じられています。残念ながら2回目のピットストップはやや長引き、アンダーカットする代わりにウィルに先行されてしまいました。その後はウィルを追走しましたが、バトルに持ち込めるまで接近することはできませんでした」

 この結果、インディGPで始まる“マンス・オブ・メイ”を前にして琢磨はポイント争いの4番手につけることとなった。しかも、琢磨はペジェノーやパワーといった最強チーム“ペンスキー”のドライバーたちと互角に戦っているのだ。「ペンスキーのドライバーと戦っているのはいいことですが、今回に関しては、まあ、なんともいえませんね。依然として、僕は集団から抜け出せていませんが、決して悪い結果ではなく、貴重なポイントを積み重ねているといえます」

「これから忙しくなります。まずはシミュレーターに乗るために2日間インディに戻り、それからインディGPのオープンテストに参加し、翌週はインディアナポリス・モーター・スピードウェイのオーバル・テストに挑みます。これから数週間は本当に忙しくなります。予定がいくつも入っていて、チームもフル回転で仕事に取り組みます。この時期をどう過ごすかによって、インディGPとインディ500での競争力が決まってくるでしょう」

written by Marcus Simmons

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