2018年 マーカス・シモンズレースレポート:インディカーシリーズ第12戦

(2018年の投稿記事を移行しました)

目覚ましい速さと残念なリザルト
第12戦 トロント

 トロントで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズの1戦で、佐藤琢磨は素晴らしいパフォーマンスを発揮したものの、フィニシュまで19周となったところでウォールに接触。5位は確実と思われたレースからリタイアすることとなった。

 さらに悔しいことには、No.30をつけたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのダラーラ・ホンダはトロントの週末を通じて快調だったので、琢磨が5位以上のポジションでフィニッシュする可能性も十分にあった。文字どおりの走り始めから琢磨はタイムシートの上位に名を連ね、金曜日に行なわれた最初のフリープラクティスでは4番手タイムをマーク。午後のセッションでは2番手に躍り出たのである。

「僕たちは走り始めた直後からとてもコンペティティブでした」と琢磨。「昨年、レイホール・チームがここトロントで素晴らしいレースを戦ったことは知っていました。残念ながら、イエローのタイミングによって速さを成績に結びつけることはできませんでしたが……。したがって、僕たちには完成度の高いイニシャル・パッケージがあることを知っていました。ただし、今年はエアロが異なっていますし、歴史的に見ても昨年のセットアップを今年もうまく活用できるとは限りません。それでも、僕たちがコンペティティブになる要素は十分にありました。過去数週間、僕たちは市街地コースのデトロイト、ロードコースのロードアメリカ、そしてオーバルのアイオワという、まったく異なるタイプのコースで常に強さを発揮してきました」

「トロントではターン8とターン9の間、それにターン11の出口からターン1までが再舗装されました。これはコース全体の20%ほどに相当しますが、それでもバンプとコースの性格という面では大幅な変更だったといえます。かつては、ターン1のブレーキングポイントにひどいバンプがずっと居座っており、これにあわせてライドハイトを決めていました。これらはトロント市とプロモーターが真剣に取り組んだ結果であり、素晴らしいアスファルトに仕上がったと思います」

「走り出した直後から、マシーンがとても自然な反応を示すことに気づきました。それでもトロントではお馴染みの、ひとつのコーナーで舗装が3回変わる状況に変わりはありません。たとえばターン1は、ターンインの部分がアスファルトで、アペックス付近はコンクリート・パッチに変わるので、リアタイアがこの上に乗るとただちに4輪ドリフトが始まります。その直後には、フロントタイアがアスファルトの上に乗るので、オーバーステア、アンダーステア、オーバーステアとステアリング特性は変化します。どんなセッティングにしても、この現象から逃れることはできません。ただし、バランスシフトを最小限に抑えることはできますし、スタビリティを改善できれば望ましい角度でターンインできるセッティングにすることもできます」

 土曜日の朝に行なわれたフリープラクティスで琢磨はトップタイムを叩き出すなど、チームは順調に前進を続けていた。「まるでマシーンがドライバーに語りかけてくるようでした。FP2では、ブラックタイアの特性をレッドタイアに近づけることだけに取り組みました。少なくない数のドライバーが、レッドタイアでのバランスとグリップ・レベルに苦しんでいました。とはいえ、土曜日にタイムシートのトップに立てたことにはとても満足できました。マシーンの調子がいいのはいつも本当に嬉しいことですし、予選に向けての自信にもつながります」

 琢磨がドライになって欲しいと願っていた予選では、雨が降り始めた。フリープラクティスでトロントの史上最速タイムをマークした琢磨は第2グループから予選に臨んだ。「ほとんどのドライバーがウェットタイアで走り始め、僕は1周目にP1となりました。ただし、このままうまくいくようには思えなかったので、ピットに入ってスリックに履き替えました。路面状況はどんどんよくなっていき、僕はまずまずいいタイムを記録して期待どおり第2セグメントに進出しました」

 ここで琢磨はグループの4番手となったが、第2セグメントでは7番手に留まった。FP3でトップタイムをマークしたとき、琢磨はブラックタイアを履いていたので、決勝は新品のレッドタイアでスタートし、続いて新品のブラックタイアに交換する作戦を立てた。

「残念なことに、レッドタイアでタイムを出した——このときはたしか2番手でした——あとで霧雨が降り始めました。レッドタイアよりブラックタイアのほうが作動温度レンジは高いので、レッドタイアのほうがいい反応を示します。僕にはタイアが小刻みに振動するのが感じられ、残念ながらファイアストン・ファスト6への進出を逃しました」

 ウォームアップではローダウンフォース・セッティングを試したものの、これは失敗で、琢磨はすでに実績のあるセットアップでレースに臨むことにした。そして、これは大成功だった。オープニングラップが終わる前に、琢磨はサイモン・パジェノーをパスして6番手となり、続いてアレクサンダー・ロッシを攻略して5番手に浮上した。「とても楽しくてエキサイティングな1周目でした。ターン1はうまくいき、ターン3は何ごとも起きないように慎重に通過したところ、チャンスがやってきました。僕の目の前でロッシとウィル・パワーがサイド・バイ・サイドとなっていたので、僕はターン10でアウト側からロッシをオーバーテイクしました。これは本当に楽しかったです! 数周するとレッドタイアにグレイニングが起きてスライドし始めましたが、マシーンは好調でトップと同じペースで周回できました」

 No.30は最初のピットストップでブラックタイアに交換し、残り周回数もブラックタイアで走りきることにした。そしてレースが進行してすべてのドライバーが最初のピットストップを終えたとき、琢磨は3番手を走行していた。「すべて完璧でした。先頭集団はジョセフ・ニューガーデン、スコット・ディクソン、そして僕の3人。スタートから順調にポジションを上げていき、ブラックタイアのままフィニッシュまで走りきれる。とてもいい気分でしたが、この後に小さな災難が始まりました」

「内部の話でいえば、無線の調子が少し悪くてコミュニケーションがうまくとれませんでした。ストレートスピードをできるだけ伸ばそうと考えたジョセフは、リスタートの際、ターン11で大きくアウト側にマシーンを振りました。ところがここでマーブルに乗り上げてしまい、ウォールに接触したのです。その直後に無線で“リスタートは取り止められた”と伝えられました。僕には『グリーンにはならない』と聞こえたので、ジョセフを避けるためにスロットルペダルを緩めました。ところが、実際にはリスタートが切られ、僕は8番手に後退したのです。僕たちは6ワイドになってターン1に進入しようとしていたので『なんだ? 本当は何が起きているんだ?』と思いました。ターン1ではアウト側から2台を抜き返しましたが、本来であればP1かP2だったのに6番手まで順位を落としていました。このときは本当に悔しく思いました」

 その後は、タイアにピックアップが起きたのかペースは伸び悩み、プッシュ・トゥ・パスにも問題が起きてさらに状況を悪化させることになった。このとき、琢磨は4番手だったが、マルコ・アンドレッティに抜かれて5番手となる。「プッシュ・トゥ・パスは、マニュアルでオフにするかスロットルを戻すまで、20秒間作動しますが、わずか2秒使っただけで自動的にキャンセルされてしまいました」

 アンダーカットを狙って早めに行なった2回目と3回目のピットストップは、どちらもトラフィックに巻き込まれて失敗に終わってしまう。「いまだったら“あれは早すぎた”ということもできますが、もしもイエローが出ていたら僕たちは優勝していたでしょう」

 琢磨は中段グループを抜く間にタイアを消耗させてしまうが、依然としてその走りは力強く、25周を残した段階では5番手に留まっていた。しかも、トップグループはまだ最後のピットストップを残している。悲劇は、このとき起きた……。

「ターン11の進入で、おそらく0.5フィート(約15cm)か1フィート(約30cm)ほどラインを外しました。ここでマーブルを拾ってしまい、ウォールに接触しました。ジョセフとまったく同じ状況です。これにはとても腹が立つと同時に落胆しました。ここまでは素晴らしい週末でした。地元カナダのファンもたくさん集まってくれました。彼らは本当にレースが好きで、なかには僕がスーパーアグリに乗っている当時の写真を持ってきたファンもいました! 彼らがニコニコしている様子を見られたのは本当に素晴らしかったのですが、僕のチームとグレアム・レイホールにとっては散々な1日となりました。ただし、僕たちがとてもコンペティティブであることは証明できたと思います」

 次戦はミドオハイオのロードコースで行なわれるが、ここはレイホール・ファミリーの地元であると同時に、ホンダの工場が近くにあることでも知られる。「チームにとっては素晴らしいコースで、ここではいつも目覚ましいパフォーマンスを発揮してきました。僕たちには勢いがあるので、また力強い週末を過ごしたいと願っています」

written by Marcus Simmons

Glicoはレーシングドライバー佐藤琢磨選手を応援しています。プロジェクトページ >>> https://www.glico.com/jp/enjoy/support/sports/
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